[イメージ写真]東京医科大の女子受験者差別問題が波紋を広げている(アフロ)

 女性受験者と4浪以上の受験生には一切加点せず――。東京医科大の入試不正問題で、大学の内部調査委員会が8月7日に発表した調査結果では、女子らの合格者数を抑えるために10年以上前から点数操作を繰り返してきた実態が明らかになりました。「女性は出産などで医療の現場を離れることが多く、医師が不足する恐れがある」というのが理由でした。こうした点数操作は明らかな女性差別であり問題視されていますが、医療現場の現実として理解を示す見方も一部であります。

 労働社会学が専門の和光大学教授でジャーナリストの竹信三恵子氏は、そもそもこの問題の根底にある発想を変える必要があると指摘します。竹信氏に寄稿してもらいました。

         ◇
 東京医科大学の入試不正をめぐり、大学側が女性受験者の点数を一律に下げていたことが衝撃を与えています。女性であるだけで減点、というあまりにもあからさまな女性差別が批判を浴びるのは当然のことですが、その根にある「日本型女性活躍」の問題点は、見過ごされがちです。それは、政府の「働き方改革」の底流にもある「女性活躍=男性並みの働き方」という考え方です。

女性は「アクティビティ」が下がる

[画像]入試不正に関する調査結果を発表した内部調査委。植松弁護士(左)と中井弁護士

 7日に発表された同大の調査委員会報告書に、「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる、というのがかかる得点調整を行っていた理由のようである」という記述があります。記者会見ではこの点について、「女性が結婚・出産で育児をしなければいけなくなると長時間勤務等ができなくなるという意味」(調査委メンバー・植松祐二弁護士)、と説明されました。

 日本企業の標準的な労務管理は、人員をぎりぎりまで削減して人件費を削り、仕事量は減らさずに社員の長時間労働で埋めるというものです。これでは、残業ができなかったり、子どもの病気で休まざるを得なかったりする社員が増えると、他の働き手の負担増で埋めるしかなく、手いっぱいの状況に新たな負担がのしかかることになります。

 日本特有と言われる「マタニティハラスメント(マタハラ=妊婦や母親社員に対する嫌がらせ)」も、人員削減の中で、育休の負担を社員たちの仕事量の増大と自助努力で解決させる労務管理が背景にあります。こうした労務管理の転換ができないため、様々な組織で暗黙の女性排除が起きることになります。

 10年ほど前まで働いていた新聞業界でも、女性記者から「人事担当者から、成績で採用すると女性が2割を超えてしまう、なんとか合法的に抑制できる手立てはないかと相談された」と聞いたことがあります。女性は育児などで転勤が難しいからというのです。いまでも若い女性記者たちから、そうした業界の空気はなくなっていないと聞きます。

 ここで問題なのは、まず、すべての女性の転勤が難しいわけではないということです。最近では地方の実情を取材したいと地方通信局に異動を希望し、ゆったりした自然の中で子育てした女性記者もいます。保育所も地方都市なら空きがあることが少なくありません。男性でも、介護を抱えて転勤が難しい記者はいます。重要なことは、面談で社員のライフスタイルをじっくり聞き出し、それに沿ったプランをつくること、さらに、地方転勤でその後のキャリアが不利にならないような人事システムにすることです。