信仰の対象と芸術の源泉として世界文化遺産に登録された富士山。その構成資産の1つ「人穴富士講遺跡」にある聖地の洞穴はこれまで安全上の問題などから立入禁止とされてきたが、8月から事前に予約をすれば内部もガイドの案内で見学することが出来るようになった。管理をしている静岡県富士宮市文化課は公開について「富士講が修行した場所を体感してもらうため」としている。一方、富士信仰を継承する宗教者らの思いは複雑なようだ。

世界遺産の人穴浅間神社境内地にある、角行が修行をした洞穴=静岡県富士宮市人穴

 「公開」されたのは富士宮市人穴の人穴浅間神社境内にある約83メートルの溶岩洞穴の内部。富士講の祖、角行(かくぎょう)が修行をし、亡くなった場所とされ、洞穴内部には浅間大神(アサマノオオカミ)の碑や石仏、コノハナサクヤヒメの石像、修行の行場などがある。

 人穴浅間神社境内地には富士講の信者がたてた碑塔が数多くあり、境内地は世界文化遺産に登録されている。角行を祖とする富士道、すんわち富士信仰の継承者を現代に継承する宗教者にとって人穴洞穴は聖地であり、今日も人穴洞穴に定期的に参詣をして神事を行っている。

 富士宮市は、溶岩洞穴が崩落する危険性があることから、宗教活動を除いて洞穴内への立ち入りを禁止にしてきた。富士山世界遺産の構成資産については、国や県の補助金を得て整備が行われており、そうした整備の一環として富士宮市は、人穴洞穴の安全を確保し一般の人が通行できるようにするため、内部に鋼材のシェルターを設置。このほど作業が完了したことから8月より週末と祝日に限り、事前に富士宮市文化課に予約をした人を対象に洞穴内部を公開し見学できるようにした。

 人穴浅間神社社殿の脇にある急な石段を下りると、ひんやりとした空気に包まれて洞穴の入り口に達する。洞穴に入ると向かって左側に箱型の鋼材シェルターの入り口があり、シェルターの中を歩いて約83メートルあるという洞穴の半分程度の所まで行くことができる。

 洞穴内の見学には富士山世界遺産ガイドが必ず付いて案内し、1人のガイドにつき見学者は10人まで。無料で貸し出しているライト付きヘルメットの着用と、注意事項を記載した同意書への署名が求められる。

 参加した茨城県の女性は「故郷の富士宮に家族で帰省しました。子供の頃、富士宮で過ごしましたが、ここは知りませんでした。故郷再発見のような感じでよかったです」と話していた。