長野、山梨両県にまたがる八ヶ岳周辺で栄えた縄文時代の「黒曜石文化」が文化庁の2018年度「日本遺産」に認定されました。北海道大雪山麓のアイヌの伝承や栃木県宇都宮市の大谷石文化など12件と合わせて認められました。縄文時代、黒曜石は矢じりなどの材料として貴重で、特に信州産は品質の良さで広く各地に流通。長野県では黒曜石採掘の痕跡が見られ、縄文人の苦労や熱意が今も伝えられています。

「縄文人の苦労と熱い思いが伝わってくる」

[写真](上)縄文人の情熱をかき立てた黒曜石と(下)黒曜石の交易を背景に発展した土器文化(ともに申請書資料から)

 日本遺産は、文化庁によると地域の歴史的魅力や特色を通じてわが国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定するもので、国指定・選定の文化財を含め長く受け継がれている伝承や歴史を踏まえたストーリーを構成するものとしています。

 八ヶ岳周辺の茅野市、富士見町など長野県の8市町村と、甲府市、北杜市など山梨県の6市が両県とともに長野県を代表自治体として申請。今年5月に下村彰男・東大大学院教授を委員長とする審査委員会で認定されました。

 「星降る中部高地の縄文世界」と題した申請書によると、3万数千年前に大陸から伝わった石器づくりに日本列島のものづくりのルーツがあるとし、代表的なものが黒曜石の加工。矢じりやナイフなどさまざまな石器を生み出し、特に信州産の黒曜石は良質で割れ口も鋭く、広く歓迎されました。

 現在のような運送手段がなかった当時、数万年にわたり産地限定の黒曜石が大量に、しかも広域で流通したことは「日本最古のブランドとして人気が高かったことを示している」。

 八ヶ岳を中心とした中部高地の霧ヶ峰高原にある星糞峠(ほしくそとうげ)の黒曜石鉱山は、縄文人が数千年にわたり黒曜石を掘り続けた国内唯一の黒曜石鉱山。申請書では「土手の中央部にクレーター状のくぼみとして黒曜石を掘り出していた痕跡を見ることができる」としています。

 周囲の土盛りは掘り出した土砂を積み上げたもので、その厚さは5メートル以上。地下では3500年前に造られた土砂崩れを防ぐための木柵が見つかっており、「縄文人の苦労と熱い思いが伝わってくる」と歴史に思いをはせます。

 国内の黒曜石鉱山は、星糞峠、星ヶ塔(ほしがとう)など星の名が付く高原地帯で発見されており、輝く黒曜石は星のかけらと信じる後の祖先たちの間でこうした地名が生まれたと申請書は説明しています。