近年、銀行業界が社会的関心の的となったのは、バブル崩壊に伴う金融再編時、そしてリーマンショックによる金融不況時ではなかろうか? 今日、銀行業界は表面的には平穏を保っているように見える。しかし、日本の銀行に変革の嵐が吹き始めているという。『銀行員はどう生きるか』(講談社現代新書)の著者で経済ジャーナリストの浪川攻氏に銀行業界を取り巻く現状について聞いた。

事務スペースのない店舗が主流になる

「初めて銀行の顧客が銀行でないところに行ってしまうリスクが出てきた」と話す浪川攻氏

──銀行ってたくさんありますけど、正直、何が違うのかと言われると名前が違うことくらいしかわからないですね(笑)

浪川攻氏 僕らのような大衆に対する銀行のサービスというのは結局、どこも同じですからね。それほど差はないですよ。それが富裕層、金持ちになると違ってくるわけです。サービスの厚みがね。一般庶民にとっては結局、銀行を選ぶ時の動機というと近くにあるとか、そういうことになっちゃうわけですね。だけど、これからは近くにあると思っていた店舗がなくなっちゃう可能性があるし、今や振り込みなどは家にいてもできちゃう。そういう状況になってくるので、銀行を選ぶ動機が、「家の近くにあるから」ということにならなくなるかもしれませんね。これからは感じがいい、わかりやすい、使いやすい、使い勝手がいいというようなことで競争が始まる。その勝負のカギを握るのがフィンテックです。

──本の中では、新しいタイプの銀行店舗を紹介されていますね。

浪川氏 三井住友銀行が従来とはまったく違う店舗を出しはじめました。スタッフは少人数で、事務スペースがなくて完結する店舗で、アメリカの店舗に追随したものです。メガバンクの中で店舗改革は三井住友が圧倒的にリードしています。三井住友の店舗は全国に420くらいあるのですが、来年度いっぱいですべて新しいタイプの店舗に変えるようです。3つのメガバンクの中で店舗改革についてはものすごく差が出ている。それはどうしてかというと、三井住友は早くから経営層がアメリカやヨーロッパの状況を把握して、その決断を早くしたからです。

──銀行の店舗というと、カウンター越しに女性が応対する固定化されたイメージがあるので、事務スペースがないというのはかなり斬新です。

浪川氏 伝統的な銀行店舗というと、30、40人のスタッフがいて、半分以上はカウンターの後ろの方で事務作業をしていました。それをカウンターでキーボードを打てばデータが事務センターにいき、事務センターで全部処理をするやり方にインフラを変えたので、支店の事務がいらなくなっちゃった。今は過渡期で、支店にいた事務の人をセンターに移動させてセンターで働くということをやっているわけですけど、だんだんセンターもIT化してくるので、どんどん人はいらなくなってきます。