甲子園閉会式での高野連八田会長の金足農を「高校野球のお手本」とした講評が議論を呼んでいる

秋田の“雑草集団”金足農と、北大阪の“超エリート野球集団”大阪桐蔭が21日、激突した第100回全国高校野球選手権の決勝戦は13-2の大差がつき、大阪桐蔭が史上初となる2度目の春夏連覇を果たした。

 5試合すべてに完投してきたプロ注目の吉田輝星は、連戦となった疲労の蓄積からか、4回ぐらいから足が動かなくなり、宮崎仁斗、根尾昴に浴びた本塁打を含む12安打12失点して5回でマウンドを降りた。
 5回を終えた時点で主将が投手交代を中泉監督に進言したという。大量の点差にもかかわらず、最後まで満員のスタンドから続いた拍手が印象的な決勝戦だったが、試合後に行われた閉会式で大会の審判委員長をつとめた高野連会長の八田英二氏(69)が行った「講評」がネット上で物議をかもしている。

 八田氏は、まず「選手の皆さまの奮闘により素晴らしい試合の連続となりました。阪神甲子園球場を訪れたお客様の数は、史上初めて100万人を突破して最多の101万5000人にのぼりました」と、ビジネスの成功の話をした。これは朝日新聞に書いてもらえばいい話である。そして、今春の選抜大会から採用され今大会で初めて実現したタイブレークの2試合について触れた後、問題の一節が出た。

「金足農業の選手の皆さん、準優勝おめでとうございます。秋田大会からひとりでマウンドを守る吉田投手を他の選手が盛り立てる姿は目標に向かって全員が一丸となる高校野球のお手本のようなチームでした」と評したのである。
 予選から全試合を9人で戦い、選手は、すべて秋田の地元から集まり公立校のハンディを克服しながら戦った金足農は、高校野球ファン以外の人々に感動を与えた。バント戦法を基本にする原点回帰のような野球でもあった。だが、吉田は、秋田県大会の5試合を一人で投げきり、甲子園でも、決勝まで5試合すべてに完投。決勝戦では、5回に132球で力つきたが、実に6試合で881球も投げたのである。

 連投となった決勝での吉田のボールは明らかに力がなかったし、足に力が入らないくらいに酷使された野球が「高校野球のお手本」なのだろうか。

 ネット上のSNSやコメント欄でも「前近代的な野球がお手本?」と、この点を批判する声で溢れた。
 
 八田氏は、この「高校野球のお手本」の発言の前段で誇らしげにタイブレークの導入について触れていた。13回以降に無死一、二塁から行われることになったタイブレークの導入理由は、「選手の健康管理」だった。2013年のセンバツ大会で、愛媛・済美高の2年生投手、安楽智大(楽天)が、3日連投を含む5試合に登板して実に772球を投げ、海外メディアから、この異常さが批判を浴び、準決勝前の休養日の導入や、今回のタイブレーク導入のきっかけになった。「酷使」を避けるためにルールを変えている一方で、一人で881球を投げた金足農の野球を「高校野球のお手本」と「講評」で語るのは、どうにも矛盾している。

 そもそも辞書をひくと「講評」とは、「説明を加えながら批評すること。理由を説明し批評すること」とある。「高校野球のお手本」と批評した理由が「ひとりでマウンドを守る吉田を盛り立てて一丸となった野球」であるのならば、盛り立てさえすれば「酷使」もお手本なのだろうか。言葉足らずである。

 中泉監督も、甲子園レベルの投手がもう一人いれば、吉田を酷使することもなかっただろう。6回から後をついだのは、三塁手の打川和輝だったのである。