沖縄海塩研究所の社員の皆さん

 沖縄本島の那覇から北西に約60kmの海上に位置する粟国(あぐに)島。周囲約12kmの島に、約700人が暮らす一島一村の小さな島である。沖縄本島の周りにはリゾート開発が進む島が多い中、沖縄では珍しく起伏に富んだ海岸線と自然、沖縄古来の原風景が残る。那覇泊港からフェリーで2時間あまり、瑠璃色の海に見えてきた粟国島を訪ねた。

フォト・ジャーナル<島の大自然がおもてなし沖縄・粟国島>倉谷清文第12回

竹に流すことによって太陽と潮風に触れる時間を稼ぐ

 村の集落はほぼ島の南側に集まり、島の北部にはあまり建物が見当たらない。その北岸にポツリと目立つ四角いコンクリートの建物がある。粟国の特産品にもなっている「粟國の塩」を作る沖縄海塩研究所である。

 研究所という名の塩工場を設立したのは小渡幸信(おどこうしん)さん。1970年代から自然塩運動の学者とともに塩の研究を始めた。当初、沖縄本島の読谷村を拠点に研究をしていたが、より良い環境を求めたどり着いたのがここ粟国島の北端岸だったという。

 周りに民家や畑がないこの場所は、生活排水も農薬も流れ込まない。周りに高い山や建物がないことで、太陽と潮風の恵みを余すことなく受けられる。自然海塩作りには絶好の場所だった。

 海水のにがりが馴染んだ塩は甘味や旨味もありミネラルが豊富に含まれている。母胎の羊水と海水の微量元素の構成比はほぼ同じだという。「いのちは海から」という研究所の壁に掲げられた言葉は、全ての生命は海から誕生し、人々が健康でいられることへの願いが込められている。

薪を燃やし炊き上げる熱と蒸気で場内の熱気がすごい

 穴あきブロックを積み上げた四角いコンクリートの中には高さ10mから1万5千本の竹がぶら下がっている。そこに汲み上げた海水を何度も竹に流して循環させ、太陽の熱と潮風で水分を蒸発させていく。

 1週間以上かけて塩分約15%のかん水が作られる。そのかん水を大きな平釜で約30時間かけ、ゆっくり煮詰めていく。炊き上がった塩は脱水槽でさらに6〜18日かけて自然乾燥させ、ようやくミネラルを多く含んだ釜炊き塩が完成する。

 一方、温室のプールでは天日により結晶化させた天日塩が作られている。夏場で3週間、冬場は2〜3ヶ月かかるという塩は釜炊きとはまた違った風味が生まれるという。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<島の大自然がおもてなし沖縄・粟国島>倉谷清文第12回」の一部を抜粋しました。

(2018年8月撮影・文:倉谷清文)