大豆の香りとほのかな海水の塩味が美味しいゆし豆腐

 沖縄本島の那覇から北西に約60kmの海上に位置する粟国(あぐに)島。周囲約12kmの島に、約700人が暮らす一島一村の小さな島である。沖縄本島の周りにはリゾート開発が進む島が多い中、沖縄では珍しく起伏に富んだ海岸線と自然、沖縄古来の原風景が残る。那覇泊港からフェリーで2時間あまり、瑠璃色の海に見えてきた粟国島を訪ねた。

フォト・ジャーナル<島の大自然がおもてなし沖縄・粟国島>倉谷清文第12回

「うえずのとうふやさん」の上江洲光子さん

 沖縄地方の郷土料理で有名な「ゆし豆腐」。木綿、絹ごし豆腐のように固める前のおぼろ状の豆腐である。豆乳ににがりをうつのが普通だが、島の豆腐は海が綺麗なので海水をうつのが特徴だ。

 今では粟国島に残るお豆腐屋さんは2軒のみ。「昔はどの家庭でも作っていたのにね」というのは上江洲光子(うえずみつこ)さん。粟国に来たのは40年前、ゆし豆腐を作り続けて15年になる。

上江洲さんは豆腐以外にも粟国島土産のアガラサー(蒸しパン)作りも一人でこなす

 同じ沖縄県の離島、伊是名島出身の上江洲さんは「若い時は島(離島)の生活がつまらなく思って那覇(本島)に出て来たけれど、旦那と知り合ってまた島に来ちゃった。でも粟国は海も綺麗だし、いい自然が残っているから大好きなの」と笑顔で話す。

 今日はヤガン折目の2日目。島では家庭でお豆腐をお供えするのが風習だ。ゆし豆腐と箱で固めた角豆腐がちょうど出来上がる頃、「みっちゃん出来てるー」という声とともに近所の奥さんたちの声が裏のガラス戸越しから聞こえて来た。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・倉谷清文さんの「フォト・ジャーナル<島の大自然がおもてなし沖縄・粟国島>倉谷清文第12回」の一部を抜粋しました。

(2018年8月撮影・文:倉谷清文)