2勝1敗でグループリーグを終えた森保監督率いるU-21が決勝トーナメントへ。初戦はマレーシアだ(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 アジア大会の男子サッカー、ラウンド16のマレーシア戦2日前にあたる8月22日、グラウンドの隣で昨日まで木に繋がれていた数頭の牛たちが、いなくなっていた。

 インドネシアはイスラム教の犠牲祭の時期で、生贄として捧げ、残りを分け合って食べるためにさばかれた牛たちは、肉の塊となっていた。解体作業を担うのは慣れた手付きの男たちだが、女性も子どもも手伝っている。あたりには血の臭いが充満し、肉を叩き切る音が聞こえてくる――。

 これには選手たちも驚きを隠せず、思わず視線を向けていた。ここまで1ゴールをマークしているストライカーの前田大然(松本山雅)が振り返る。

「気になってました。さっきまで立っていたのに倒れていたので。悲鳴も聞こえてビックリしました」

 もっとも、ピッチ全体を使ってゲーム形式の練習を積めるだけ、この練習場はマシなほう。これまで使用してきた3つの練習場はホテルから移動するのに1時間以上かかったり、照明が暗くてボールが見にくかったり、芝がはげて凸凹でボールを使った練習ができなかったりと、まともな所がひとつもなかった。

 これがジャカルタではなく、近郊都市のチカランやブカシで試合を行っている男子サッカーの現状なのだ。 もっとも、若き日本代表にとっては厳しい環境に身を置くことも、タフなメンタリティを身につけるために必要なことだろう。

 スケジュールもいい加減で、初戦のネパール戦と2戦目のパキスタン戦はなんと中1日、続くベトナム戦は中2日で行われたのに対し、ラウンド16のマレーシア戦までは中4日もある。そういうわけで、ようやくまともな戦術トレーニングを積めたのが、21日と22日の2日間だったのだ。

 その2日間で、チームを率いる森保一監督が力を注いだのが、GK、ディフェンスラインからのビルドアップである。

 21日のトレーニングでは相手からのプレッシャーがより掛かりやすい狭いピッチの中で、繋ぐ技術を磨きながら、繋ぐのか、大きく蹴るのかの判断を磨いた。22日のトレーニングでも広いコートでプレッシャーを受けた状態で、GK、3バック、2ボランチによるビルドアップを行い、ポジションの取り方、パスコースの作り方、数的優位の作り方、ロングボールを使ったひっくり返し方を入念に確認した。

 その際、森保監督はこれまでの柔和な物腰とは打って変わって、熱のこもった強い口調で指示を飛ばしていた。
 だが、それには訳があった。

 ともに2連勝で迎えたベトナムとの第3戦、開始3分にGKオビ・パウエル・オビンナ(流通経済大)からボランチの神谷優太(愛媛FC)へのパスを狙われて失点し、そのまま0−1で敗れたのだ。
 ピッチ状態が悪いうえに、開始直後からベトナムがハイプレスとマンマークで圧力を掛けてきたにもかかわらず、ショートパスを繋ごうとして招いた軽率な失点だった。