2017年度に労働基準監督署の指導によって支払われた未払いの残業代が前年の3.5倍に増加したことが明らかとなりました。金額の大半は特定事業者によるものですので、実態はもっと深刻である可能性も高いでしょう。

写真:アフロ

 厚生労働省によると、全国の労働基準監督署が是正の指導を行った企業は1870社で、その結果、支払われた未払いの残業代は446億円となりました。前年度は1349社で金額は127億円でしたから、会社数、金額とも大幅に増加しています。

 残業代を受け取っていなかった労働者の割合としては、運輸交通業がもっとも多く33.8%、ついで製造業が27.4%、保健衛生業が11.6%という順番でした。

 今回の調査結果には少し特殊な事情があります。支払われた未払い残業代は446億円で、もっとも対象者が多かったのは運輸交通業ですが、この金額の半分はヤマト運輸によるものと想定されます。同社は昨年、労働基準監督署から是正勧告を受けており、未払い残業代が240億円に達したことについて公表していますから、今回の調査にその数字が含まれているのは確実でしょう。

 もしヤマトの事例が極めて特殊なものであるならば、2017年度の調査結果は異常値ということになりますが、実際はそうでもなさそうです。企業によっては慢性的なサービス残業が行われており、ヤマトのケースは氷山の一角である可能性が捨てきれません。つまり、ヤマト以外の企業でも、労働基準監督署の指導が入った場合には、多額の未払い残業代が出てくる可能性があるわけです。

 最近は働き方改革を推進するため、大企業を中心に強制的に残業時間を抑制する動きが顕著になっています。しかし、業務の根本的な見直しを行わず、処理できなかった仕事を下請けや外注先に投げるケースもあり、下請け企業や外注先の企業で残業が発生するという矛盾した事態も生じているようです。

 これまで日本の労働行政では、中小企業の長時間残業は事実上、黙認されてきたという現実がありましたが、中小企業に本格的にシワ寄せが行くという状況ではそうも言っていられません。中小企業も含め、未払いの残業代が発生しないよう、きめ細かい行政指導が求められています。

(The Capital Tribune Japan)