7月に行われたカンボジアの総選挙で中国がネットを使った選挙介入に乗り出した疑いが指摘されています。米国でも前回の大統領選挙にロシアが関与した疑いが浮上しましたが、ネットの普及が民主主義を危うくするという皮肉な状況となりつつあるようです。

カンボジアを訪問した李克強首相(左)とフン・セン首相(2018年1月、ロイター・アフロ)

 カンボジアは前回(2013年)の選挙で民主化を掲げる野党が躍進し、フン・セン首相率いる与党・カンボジア人民党は苦戦を強いられました。今回の選挙では野党が政権交代を実現するとの予想も出る中、フン・セン氏は野党の党首を逮捕するという強攻策に出ます。政権に批判的なメディアは次々と弾圧され、最終的に野党救国党も解体に追い込まれます。残された野党幹部は他国に亡命。今回の選挙は事実上の無投票状態となり、カンボジア人民党が圧勝となりました。

 フン・セン氏は、後に200万人のカンボジア人を虐殺したポル・ポト派の幹部でしたが、ポル・ポト派の過激な政策に反発して同派を離脱。その後、ベトナムとソ連を後ろ盾とするヘン・サムリン政権で首相に就任し、以後、30年以上にわたって実権を確保してきました。

 近年、フン・セン氏は中国との距離を縮めており、カンボジアには中国からの莫大な援助で次々とインフラが建設されています(首都プノンペンの街中にはチャイナエイドと書かれたバスがたくさん走っています)。

 中国はフン・セン氏を支援するため、米国に居住する野党関係者にウイルスメールを送って内部情報を入手しようとしたほか、中国のサーバーからカンボジアの選挙委員会などにアクセスを試みたことなどが分かっています。前回の米大統領選挙でもトランプ大統領を勝たせるため、ロシアが選挙に介入した疑いが持たれていますが、サイバー攻撃による選挙介入はかなり現実的なレベルになっているのは間違いありません。香港の民主化運動でも中国政府がSNSの広範囲な監視を行っていたことは周知の事実です。

 こうした中、中国が次のターゲットにしているのは、11月に開催される台湾の地方選挙ではないかと指摘する声があります。台湾では国民党が下野し、中国と距離を置く蔡英文氏が総統に就任したことで中国は神経を尖らせています。

 インターネットの普及は民主化を後押しするといわれていましたが、ここまでネットが普及すると必ずしもそうとは言えなくなってきます。今後はこうした見えない陰湿な覇権争いが拡大していくことになりそうです。

(The Capital Tribune Japan)