拳四朗(左)のV4戦は八重樫を倒した元世界王者。最強挑戦者となるが、勝てば予約の取れない店へのニンジンをぶらさげた。右は父でジム会長の寺地永

プロボクシングのWBC世界ライトフライ級王者、拳四朗(26、BMB)のV4戦が10月7日、横浜アリーナで行われることが28日、都内のホテルで発表された。相手は元IBF世界ライトフライ級王者のミラン・メリンド(30、フィリピン)。昨年5月に八重樫東(大橋)を1ラウンドで倒してタイトルを奪取、大晦日に元WBA世界ライトフライ級王者、田口良一(31、ワタナベ)と統一戦を戦い接戦の末、判定負けしている強豪ファイターだ。戦績は40戦37勝(13KO)3敗。メインはWBA世界バンタム級王者、井上尚弥(25、大橋)が元WBA世界バンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(34、ドミニカ共和国)と戦うWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の初戦で拳四朗の防衛戦はセミファイナルとして行われる。

 最強挑戦者だ。

 今回は、いわゆる選択試合で、本来は拳四朗サイドが挑戦者を自由に選べるのだが、中継局のフジテレビ側が提案してきたのが、元IBF世界ライトフライ級王者のメリンドだった。八重樫を秒殺、田口との統一戦は一進一退の攻防の末、判定で惜敗したが、年間最高試合に選ばれている。非常に手ごわい相手だ。

 世界のボクシングマーケットの流れに沿い、中継局側が好カードを求めるのは当然と言えば当然だが、メインカードは日本初登場となる井上尚弥のWBSSの初戦とあって、セミファイナルに、やる前から勝敗が見えているようなカードを組むわけにはいかなかったのだろう。

「希望したわけじゃない。メリンドがまあまあ強いのはわかっていたし、選択試合なんだから、もうちょっと軽く勝てる相手にしたかった」という寺地永会長だが、その申し出を即決した。
「即答した。負けることはないと判断した」
 実は、ライトフライ級への転級を決めた前IBF世界ミニマム級王者、京口紘人(24、ワタナベ)からの対戦オファーもあった。だが、京口の試合スケジュールが先に組まれていたため、大学時代に対戦経験のある注目の日本人対決は実現しなかったという。

 2週間ほど前にメリンド戦内定を聞いたという拳四朗は明るく笑う。

「ああ知っている選手や思いました。八重樫さんが負けた衝撃的な試合は見にいっていましたからね。でも、怖さはないな。自分のボクシングとは(噛み)合うかなと」

 そして、こう続けた。

「メリンドは日本で2回試合をやっていて知名度がある。勝ちがいがある。勝てば自信になるし、これからのキャリアを考えると、ここで自信をつけることが大事ですからね。より名前を広めたい。元王者で強い選手。こういう選手に勝ってより評価を上げてスター選手になれればいいと思います」

 父である会長は元東洋太平洋王者の“親子鷹”であり、劇画の主人公の名前から取った本名の「拳四朗」にもインパクトがあり、5月には元王者のガニガン・ロペスとのリターンマッチを衝撃の2ラウンドKO勝利で退けてV3に成功した。童顔で試合直前まで微塵も殺気を見せずにニコニコしているキャラクターは、これまでのボクサー像を覆すような“ゆるキャラ”ではあるが、なかなかメインカードに採用されず、テレビの生中継からも外されるなど人気面でブレイクできない歯がゆさがある。そのあたりを本人は、強烈に意識しており、毎試合、毎試合、知名度アップがテーマとなってしまっている。

 いつまで知名度アップを言い続けるの?と聞くと「一生じゃないですか」と屈託なく笑う。

 過去に「リングで戦うこと以外はやりたくないし興味もない」というボクサーもいた。だが、プロとして、こういう涙ぐましい努力を続ける姿勢は立派だろう。その努力がいつか花咲けばと願うファンも少なくない。
 寺地会長も「人気アップのために勝ちに徹するだけでなく倒すことが重要」とのノルマを課す。だが、今回の相手に、そこまでの付加価値を求めるのは危険だ。