イメージ写真:アフロ

 7月消費者物価(CPI)は総合CPIが前年比+0.9%、コアCPI(除く生鮮食品)が+0.8%、新型コアCPI(除く生鮮食品・ エネルギー)が+0.3%でした。総合CPIの伸び率が高い反面、新型コアCPIの伸び率が低いのは、生鮮食品とエネルギー価格の上昇率が高い一方でそれ以外の品目の上昇率が低い(下落している)ためです。生鮮食品は猛暑による野菜価格高騰、エネルギー価格は1年~1年半前との比較で原油価格が上昇したことが理由ですから、これら要因は一時的です。それらを除いた新型コアCPIが日銀の物価目標である2%を大幅に下回っていることは、日本経済がなお低体温症を克服できていないことを物語っています。このことは、失業率が2%台前半まで低下するなど労働需給が引き締まっているにもかかわらず、個人消費が精彩を欠く下、企業が値上げに慎重姿勢を崩していないことを浮き彫りにしています。

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一部、人件費上昇が価格に反映も、依然として消費者への価格転嫁は厳しい状況

企業向けサービス価格指数(除く国際運輸)

 他方、企業間のサービス価格を集計した企業向けサービス価格指数は7月の数値が前年比+1.1%、国際運輸を除いたベースで+1.0%と比較的高い伸びを示しています。内訳は宿泊サービス、土木建築サービスの高い伸びが一服した反面、振れの大きな広告が上向き、運輸・郵便の伸び率が一段と加速しました。この指標は1985年に公表が開始され、90年代前半をピークに20年近く下落を続けた後、2013年頃から反転上昇。足元では労働コスト上昇が価格転嫁されたとみられ1%近傍の上昇が定着しています。労働集約的なサービス業では人件費上昇が価格に反映される傾向があり、企業間では比較的わかりやすく見て取れます。

消費者の物価上昇許容度

 他方、上述の消費者物価におけるサービス物価は前年比+0.2%とマイナス圏すら視野に入る領域で推移しています。日本が先進国で唯一デフレを経験した理由として、サービス物価が持続的に下落するという特殊性が指摘されてきましたが、目下のサービス物価をみる限り、この問題はまだ根本的解決に至っていないようです。日銀集計の「生活意識に関するアンケート調査」では、昨今の宅配危機も影響したためか、消費者が値上げに寛容になっているとの結果が示されていますが、依然として消費者への価格転嫁は厳しい状況にあるようです。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
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