米中の貿易戦争でタイが漁夫の利を得ているそうです。なぜ米中が貿易戦争するとタイが儲かるのでしょうか。

タイ・バンコクの街並み(写真:アフロ)

 タイは東南アジア各国の中では、もっとも工業化が進んでいる国のひとつで、各国の自動車メーカーがタイに工場を建設しています。国内のインフラ建設も進んでおり、国内の消費も順調に伸びています。

 同国における2018年4~6月期のGDP(国内総生産)は物価の変動を除いた実質で前年比4.6%増と好調でした。個人消費が活発だったことに加え、米中貿易戦争によってアルミの輸出が増えたことが寄与しました。

 タイにはアルミ関連の産業も多く、日本のアルミメーカーもタイに多くの工場を建設しています。アルミは自動車や航空機など様々な分野でニーズがありますが、米国はこれまで中国製のアルミを多数輸入していました。しかしトランプ政権は今年3月、通商拡大法232条に基づき、鉄鋼とアルミに関する関税の発動に踏み切りました。これによってアルミ製品には10%の追加関税が課されることになったわけです。

 中国からアルミ製品を輸入する企業は、自国産(米国産)のアルミに切り替えるか、中国以外の国からの輸入に切り替えるかの選択を迫られます。一部の企業はタイからのアルミ製品の輸入に切り替えた可能性が高く、これによってタイの輸出が伸びたと考えられます。

 タイはあくまでひとつの例ですが、貿易戦争が行われると、多くの国が調達ルートを変更することになるため、その影響は様々な分野に及ぶことになります。場合によってはタイのように漁夫の利を得ることができるかもしれませんが中国のアルミメーカーに製品を納入している企業や国にとっては逆風となるかもしれません。

 しかしながら、こうした貿易戦争を続けていけば、最終的には貿易の低迷や物価高を引き起こす可能性が高まります。今回、一部の米国企業はタイからの調達に切り替えましたが、十分な量を確保できない場合には、自国産のアルミを調達することになります。そうなってくると米国内で資材価格が高騰し、インフレが進んで金利が上昇する可能性があります。金利が必要以上に上昇すると、住宅ローンや自動車ローンに影響を与えるため、消費が低迷するリスクも出てくるわけです。

 米国経済に依存する日本にとって、こうした事態は何としても避けたいところですが、日本が打つ手は限られています。米中の交渉が進展することを祈るしかなさそうです。

(The Capital Tribune Japan)