速見コーチは暴力行為を謝罪、その上で塚原夫妻の宮川選手とセットでの引き抜き工作とパワハラの実態を赤裸々に語った

体操女子の宮川紗江選手(18)への暴力行為で日本体操協会からの無期限の登録抹消処分を受けた速見佑斗コーチ(34)が5日、都内で記者会見を行い、宮川選手への暴力行為について深く謝罪。自らが暴力行為に至った経緯や認識不足、その実態について説明し、2度と同じ過ちを起こさないことを誓ったが、質疑応答で明らかになったのが、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)と、夫の塚原光男副会長(70)の依頼を受けた関係者による朝日生命体操クラブへの2人セットの引き抜き工作と、それを断ったことによって行われたパワハラの事実だった。塚原夫妻は、8月31日に発表したプレスリリースに「一切、勧誘をしたことがない」と断言していたが、その嘘が暴かれる形になった。
 塚原夫妻の発言の信用性が崩れた今、宮川選手が直接の謝罪を受け入れない姿勢を固めたのも当然で、第三者委員会の結論を待つまでもなく、揃って辞任という形で退陣しなければもう事態は収まらなくなった。

 やはり引き抜き工作はあった。それも宮川選手と速見コーチをセットで計3度に渡って勧誘するという醜いものだった。この日の会見での質疑応答の中で速見コーチは衝撃事実を明らかにしたのだ。
 最初の引き抜き工作は、宮川選手が中3の秋から冬にかけて行われたという。

「朝日生命のコーチから、電話で連絡をいただき、『コーチと宮川選手一緒に(朝日生命に)来てもらえないか、という話をしたいので一度、食事にいきませんか』という誘いを受けまして、(そのコーチと)知り合いだったので食事に行かせていただいた。その中で『宮川選手と私がセットで朝日生命に入って欲しい、と塚原光男先生から頼まれたので、コーチが食事を誘ったんだけど』と聞いた。私自身も、思い描いている今後のプランがたくさんあったので、お言葉は嬉しいですが、お断りさせていただきますと伝えた。(勧誘は)これが初めてで、次に明確に覚えているところは、去年のモントリオールです」

 直接の勧誘ではなかったが、『塚原光男先生から頼まれた』とハッキリと語っているのだから、これはもう立派な引き抜き工作だろう。しかも、宮川選手が心酔する速見コーチとの2人セットでの勧誘だった。

 2度目の引き抜きの動きがあったのは、昨年10月にカナダのモントリオールで行われた世界選手権。現地に入った2日目の会場で、宮川選手がウォーミングアップをしている時間帯に、塚原女子強化本部長の付き人から速見コーチは、「今後の五輪とか、海外派遣とか、誰が決めるか知っている?」と聞かれた。
 速見コーチが「わかりません」と答えると「(塚原女子)強化本部長が決めるのよ」と言われたという。

 当時、宮川選手は、塚原女子強化本部長が推し進めていた「2020特別強化選手特別強化対策」に登録していなかった。強化プランの詳細が明らかになっておらず、そこに入ると朝日生命のコーチが指導を担当することになり、速見コーチと引き離され、朝日生命に入れられることになるのではないかという不安からだった。

 この付き人は、塚原夫妻の代弁者のごとく、こんな甘い言葉を投げかけたという。
「『2020に入って、朝日生命にも入ってやれば、凄く(塚原女子強化本部長が)よくしてくれるのよ』という感じのことを言われました。気持ちとして嫌ではなく、ありがたい話でしたが、そんな簡単に決められることではなかったので、そのときも断りました」

 速見コーチは、「この先、どうやっていくのが宮川選手のためになるか」を考え、振付師、女性コーチについても、「自分で選択して、この人に頼んでみたい」というプランがあったため、朝日生命への移籍を断った。朝日生命に移籍して、その思い描いていたプランを実現すればよかったのではないか?という質問も出たが、「選手もコーチも、みんな、(塚原女子強化本部長には)自分の意見が言えないと感じていた。そこでは思い切って自分たちの思い描いていることをやることは難しいと感じた」からだという。