槙野の声かけで札幌のファンと集合写真(写真提供・JFA)

 本来ならば強敵チリ代表と対峙する新生日本代表の初陣へ備えてミーティングを行い、会場の札幌ドームへ向けて宿泊先のホテルを出発する準備に追われていたはずの7日午後4時前。森保ジャパンの23人は、ナイター照明のない札幌市郊外の練習場にいた。

 ウォーミングアップを終えた後に行われたのは、前半35分、後半は日没を考慮して約20分で終わった変則紅白戦。舞台をパナソニックスタジアム吹田に移して行われる、11日のコスタリカ代表戦へ向けて体に負荷をかける意味合いも込めて実施された実戦的な練習だった。

 6日未明に発生した最大震度7の北海道胆振東部地震を受けて、日本サッカー協会(JFA)は6日午後4時半にチリ戦の中止を発表した。発生直後から道内のほぼ全域が停電となるなどインフラ機能が全面的にストップし、ファンやサポーター、選手、関係者の安全が確保できないと判断された。

 中止決定直後に宿泊先のホテルのロビーでメディアに対応した森保一監督(50)は、犠牲者の冥福を祈り、行方不明者の生存が確認され、被災者の生活が一刻も早く日常に戻ってほしいという思いを込めながら、A代表の指揮官としての初陣が中止となったことに「残念です」と神妙に言葉を紡いだ。

「もちろん試合はやりたい。選手もそのために準備してきたし、海外組も遠くから来てくれたけど、こればかりは自分たちでコントロールできる問題ではないので。自然災害には太刀打ちできないし、こういう想定外のことも受け入れながら、与えられた環境のなかでベストを尽くして次につなげたい」

 日本代表チームは上層階のワンフロアを借り切る形で宿泊していた。DF槙野智章(31、浦和レッズ)によれば「ものすごい音とものすごい揺れで、みんないっせいに部屋から廊下へ飛び出した」と、半ばパニック状態に陥っていたという。

 余震の恐れもあることから、貴重品だけをもって2階の食堂へ降りることになった。もちろんエレベーターは止まっている。ほぼ真っ暗闇の状態で階段を降りながら、不安に駆られる一般の宿泊客に対して「大丈夫ですか」と各々が声をかけた。待機すること約2時間。思いの丈を語り合いながら、あることを約束し合ったと槙野が明かす。

「みんながもっているSNSのアカウントを介して北海道の皆さんへ、もちろん北海道の方々だけではなく今回の台風で被災された方々へも、何か発信して伝えていこうという動きになりました」

 幸いにも代表チームが宿泊していた郊外のホテルは自家発電設備が完備していて、停電及び断水から早急に復旧。昼食からは普通に取ることができた、森保監督や選手たちが何度も感謝の思いを捧げた環境はしかし、札幌市の中心部とは180度異なっていた。