山根派を一掃して日本ボクシング連盟新会長となった内田貞信(右)と顧問として執行部に入った戸田裕典弁護士(左)

日本ボクシング連盟の新体制を決める臨時総会並びに緊急理事会が8日、都内で行われ、辞任した“ドン”山根明前会長(78)に代わる新会長として「日本ボクシングを再興する会」の発起人の一人で宮崎県ボクシング連盟会長の内田貞信氏(45)が選ばれた。臨時総会は、一時紛糾したが、新しく選出された26人の新理事からは山根派が一掃され大改革に乗り出すことになった。全国の会員からの意見を汲み取るコンピューターシステムを導入、審判不正や執行部の独走を民主的に監視。不透明だった経理と決算は、毎月、ガラス張りにして全会員に伝え、山根元会長が持っていた会長の各種権限をも撤廃する。除名に関する定款も正常化される。
 またプロを解禁する方向で、東京五輪の代表選考方法も見直し、プロ参加の道筋が作られる。アマ登録申請を却下され続けていたミニマム級の4団体で世界王者となった高山勝成(35)の五輪予選参加も認められることになった。新体制は組織のガバナンス整備と透明性を高めるため公益社団法人化を目指す。新しく生まれ変わったアマチュアボクシング界の大改革に大きな期待が寄せられている。

 午後1時30分にスタートした臨時総会は、一時、紛糾した。山根元会長の数々の不正を告発、退陣にまで追い込んだ「日本ボクシングを再興する会」のメンバーが新理事候補を推薦したが、一部の都道府県の理事から、新理事候補を推薦した理由や基準が不明瞭だとの批判が出た。各都道府県から2、3人の新理事候補を推薦し、それをリストにして検討した上で、再度、臨時総会を開くべきだとの意見まで出て賛同の拍手もあった。

「少数意見でしたが、早く体制を整えなければならないのは理解できるが、新理事の選定経緯や基準がわからず検討できていないという意見が出ていました。すっきりしないモヤモヤもあり、不満が残らないといいですが……。私は膿を出し切れていないと思っています。山根会長の責任だけで終わらせていいのか、中途半端ではないか、と。暴挙を見過ごしてきた人たちもいらっしゃるわけですから」(田中秀子・前副会長)という声もあったが、まず、この日に新理事を選出すべきか、どうかの決議を取り賛成多数で可決されたため、改めて
推薦された26人の新理事の選出の決議が行われ全員が承認された。総会は2時間30分に及んだ。
 
 すぐさま別室で26人の新理事による緊急理事会が開かれ、再興する会の代表で新潟県連の鶴木良夫氏、アトランタ五輪代表の仁多見史隆氏が推薦する形で新会長に内田氏が推され、全会一致で決定。鶴木氏、再興する会、発起人の菊池浩吉、習志野高ボクシング部監督時代にプロの世界王者を輩出した坂巻義男氏の3人が副会長に選ばれ、専務理事に仁多見氏が入り顧問に再興する会の弁護士を務めた戸田裕典弁護士が就任した。

 日連からの推薦理事も8人入り、再興する会からの選出は9人にとどまり、さらに全国都道府県の9ブロックからの新理事が9人加わるが、戸田顧問は、「山根派が一掃されたのは間違いない」という。

 新会長に推された内田氏は、宮崎の日章学園から近大とボクシング強豪校で活躍。古くからアマチュアボクシング界で活動した人物ではないが、父親が宮崎市議を務めた政治家一家で、宮崎で実業家として手広く事業展開をしている側面もあり、現在は、宮崎県連の会長。
 菊池副会長は、推薦理由を「強力なリーダーシップがあり、年齢若いが、精神的に強く誰もが内田さんがやるべきだと認識していた。山根政権を倒すために、判断が難しい、いろんな局面があったが慌てず騒がず判断していった」と説明した。再興する会の代表だった鶴木氏を陰でサポートし続け、その幅広い人脈を生かしてJOCの橋本聖子・副会長と面談し、アドバイスを求めるなどしてきた。それらの手腕を期待されての選出となった。

 この日の臨時総会の司会を務めた山根元会長の“側近”だった吉森照夫・専務理事も「内田さんは、ばりばりやる方だから素晴らしいと思いますよ」と、内田新会長を“支持”した。

 内田新会長には、過去に“経済事件”で起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けた“汚点”があるが、山根元会長が、反社会的勢力との交友でコンプライアンスに抵触した問題があったため、自らの逮捕歴を理事会で説明、情報を開示している。

 内田新会長は「選手ファーストにがんばっていけるように、全国で協力してやりたい。選手にとっていい環境を作りたい。透明性のある団体をつくっていきたい」と、短く所信表明をした。