9月2日、世界最大のオンラインストリーミングブランド「Netflix」が日本でサービスを開始しました。既に世界50か国以上で6500万人の会員を抱え、米国では全世帯の4分の1が利用するなど、2007年の動画配信サービス開始以来、ユーザー数は急激に増加。日本でも、これまで地上波テレビ放送やBS・CS放送が中心だった映像コンテンツの視聴スタイルに大きな革新を巻き起こすことが期待されています。そこで今回は、Netflixが世界中で高い評価を受ける強さの秘密について、Netflixで配信を開始したオリジナル作品「デアデビル」のプロデューサーであるスティーヴン・S・デナイトさんへのインタビューを交えて紹介します。

9月から配信を開始したオリジナル作品「デアデビル」

“Netflixでしか観られない作品”が、ユーザーの心を動かす

Netflixには、検索しなくても見たいコンテンツに辿りつける、ユーザーの75%が利用している強力なレコメンド機能、海外ではNetflix専用ボタン搭載リモコンが普及するなどデジタルテレビとの連携、マルチデバイスでいつでもどこでも視聴できるシームレス性など様々な強みがありますが、中でも競合サービスに対して大きなアドバンテージになっているのが、豪華なキャストやスタッフを起用し、映画並みの高いクオリティを実現したオリジナルコンテンツの充実さです。

国内外の多くの動画配信サービスは、会員から集める月額利用料を映画やテレビドラマなど既に一般に公開されている映像コンテンツの配信権を購入したり、ユーザーを獲得するためのキャンペーンを実施したりするために投資をします。そのため、多くの動画配信サービスで動画ラインナップは重複してきて、「どのサービスで見ても作品ラインナップが一緒」「テレビやDVDで観たことがあるコンテンツに魅力を感じない」といった印象を持たれてしまうのです。

しかしNetflixは、既存の映画作品やテレビドラマの調達・配信に加え、オリジナルコンテンツの製作・配信に注力し、月額利用料収入を“Netflixでしか観られない魅力的な作品”の創出に大きな投資をしています。製作されるオリジナルコンテンツは、映画館で上映される作品にも負けない高品質なものばかり。これまで、Netflixではネット配信作品として初めてプライムタイム・エミー賞を受賞した『ハウス・オブ・カード』、アカデミー賞で長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたレオナルド・ディカプリオ製作総指揮の『ヴィルンガ』など数多くの作品が世界中で高い評価を受けているのです。日本でも、フジテレビと共同で製作したオリジナルドラマ「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」や「アンダーウェア」の配信開始、そして芥川賞を受賞したピース・又吉直樹さんの人気作品「火花」の独占配信決定(2016年予定)など、話題作が次々と登場します。

テレビで視聴する番組でも、ネット動画配信される番組でも、“忙しい時間を割いてでもこの作品が観たい!”と思えるコンテンツでなければ、ユーザーの心は動きません。Netflixが配信するオリジナルコンテンツには、世界中のユーザーの心を突き動かす大きな魅力があるのです。

Netflixの強みは、豪華なキャストやスタッフを起用したクオリティの高いオリジナルコンテンツの数々

Netflixが、コンテンツ製作の常識をぶち破る

こうしたNetflixのコンテンツ製作への姿勢は、番組を製作する世界中のクリエイターをも変えようとしています。

テレビドラマを例に取ると、作品を企画・製作するクリエイターにとって、理想的な作品を目指す中で感じるコンテンツ製作の制限・制約は数多く存在します。番組を放送する時間や回数は予め決められているので、その枠組みの中で作品を完結する必要があったり、番組製作がスポンサー予算で成り立っている場合にはそのスポンサーの意向を汲み取った番組内容にしたりしなければなりません。放送番組の場合には、子どもからお年寄りまで視聴するため番組内の表現や演出にも配慮する必要があるでしょう。

しかしNetflixでは、こうした制限・制約をクリエイターに設けず、良い作品を生み出したいというクリエイターの熱意が最大限発揮された作品を製作してもらうことを最も重視しています。ドラマを例に取ると、1話あたり時間の制約はなく、クリエイターの判断で番組の尺を決めることができます。内容や表現にも大きな制約はありません。また、Netflixは世界中のユーザーから得られる月額利用料などの莫大な収益をコンテンツ製作に投資するため、クリエイターはその潤沢な予算を活用して、自分自身が理想とする“面白い作品”、“魅力的な作品”を追求することができるのです。

クリエイターの創作意欲を余すところなく製作活動にぶつけてもらえば、そこからこれまでにない高品質な作品が生まれ、世界中のユーザーの高い満足度に繋がりクリエイターに多くのファンが生まれる。Netflixはクリエイターにとって、世界中のユーザーに自分自身のクリエイティビティを試す“挑戦の場”なのです。

Netflix本社(カリフォルニア州)

オリジナル番組『デアデビル』プロデューサーが語る、Netflixの魅力

では実際に、Netflixで配信するオリジナル番組を製作するクリエイターは、Netflixというコンテンツ製作の場にどのような魅力を感じているのでしょうか。9月から日本でも配信が始まるNetflixオリジナルドラマ「デアデビル シーズン1」のプロデューサーであるスティーヴン・S・デナイトさんにお話をお伺いしました。

スティーヴンさんは、Netflixにおける作品製作が従来のテレビ作品製作と違う点について、ショウランナー(物語と制作のすべての要素を監修担当する脚本家のこと)のクリエイティブな性分に対し、ちゃんとリスペクトしてくれる上に、僕たちのビジョンを育て、守ろうと懸命に仕事をしてくれる点を挙げています。「従来のテレビの世界では、ショウランナーは、ものすごい量のメモ(放送・配信する会社からの意見や注文)の中に埋もれるようにして仕事をするということがありました。メモのひとつひとつに関して、放送・配信会社側と話し合い、口論し、対応するといったことに追われるばかりだったのです。ですが、Netflixとの仕事で数々ある良いことのひとつは、細かなことであれこれ大量のメモを洪水のように渡してくるのではなく、物語の俯瞰的なメモを少しだけ渡してくれること。その上、そう言ったメモでも、決定として渡してくるのではなく、意見を聞きたい、話し合いたいと送ってくれるところなのです」とスティーヴンさんは語ります。Netflixはあくまでも作品の作り手=クリエイターの意見や決定を重視した作品作りを目指していることを物語っています。

また作品の内容についても、スティーヴンさんはNetflixが自由な創作空間であることを高く評価しています。スティーヴンさんが米国マーベルの人気コミックを原作に製作したドラマ「デアデビル」では、昼は盲目の弁護士として働き、夜は鍛えあげた身体能力を武器にクライム・ハンター“デアデビル”として法では裁くことができない悪と戦うという設定の主人公「マット・マードック」について、次のように語っています。

「(デアデビルの設定について)興味があったのは、“ヒーローと悪者を隔てる微妙な境界線”であって、その人間の思うことを達成する時に、モラル的には疑問が残るようなことをしてしまうようなヒーローの物語を語りたいと思っていました。しかし、従来のテレビ局との仕事では、モラル上のグレイなところで主人公を動かすことはほとんどの場合許されていません。例えば私は、あるテレビ作品でヒーローにちょっとだけモラル上疑問が残る行動をさせたかった。しかし、テレビ局側からダメ出しをされたのです。彼らの理由は、番組を見ている視聴者がそのヒーローをそれ以降好きになってくれないのではないかと感じているということでした」とスティーヴンさん。表現したい設定があっても、テレビ局の判断でNGが出てしまう。それが今までの作品作りでした。

「Netflixは、それとは全く逆なんです。Netflixは『ヒーローと悪者の境界線を曖昧にしよう。君が語りたいと思っている物語に求められているのなら、ヒーローや悪者それぞれを人間的に何か欠けているところがあるように描こう』と応援してくれました。」(スティーヴンさん)。

「デアデビル」撮影の様子

“クリエイターの自由”こそ、Netflixの魅力を創り出す原動力

スティーヴンさんは、Netflixの魅力について、「Netflixがクリエイターやショウランナーに与えてくれる“自由”にあると思っています。危険を冒すことも、私たちが選んだ道に彼らがすべて完全に同意してくれていない時でさえ、Netflixが私たちクリエイターやショウランナーを支えてくれているということを知っているというのは、ものすごく解放感や自由度が高い経験だと思えるのです。それほどのリスペクトや信頼が与えられるのは稀有なことだと感じています」と語ります。

そうしてクリエイターの創作意欲を最大化させて生み出された作品たちは、全世界のNetflixを通じて多くの視聴者に届けられる。こうしたダイナミックなエコシステムがクリエイターのモチベーションを更に高めていくのです。「従来のテレビの世界では、作ったドラマは作った国で最初にオンエアされ、それ以降は海外でのセールスがうまく行けば、そこでオンエアされるか、されないかが決まっていくというものでした。もともと作った国以外で自分の作品を見てもらえるのか、それがいつになるのか、そんなことはまったく分かっていないままに制作されるものでした。ところがNetflixでは、どこにいようと誰であろうと皆が、その作品を同時に目にすることができる。場合によっては何年も待たないと海外からの反応を知ることができないという状況に比べ、オンエア直後に世界中からの反応を知ることができるというのは、クリエイターやショウランナーにとって本当に充足感の高いことなんです」(スティーヴンさん)。

スティーヴン・S・デナイトさんが手掛けた「デアデビル シーズン1」(全13話)は、米ニューヨークのスラム街「ヘルズ・キッチン」を舞台に、幼い頃に不慮の事故で視覚を失った代償として超人的感覚を手に入れた主人公マット・マードック(チャーリー・コックス)が、昼は弁護士として働きながら、夜はその超人的感覚と鍛えあげた身体能力を武器に、クライム・ハンター“デアデビル”として法では裁ききれない悪と戦う物語。“正義とは何か”という葛藤を抱き孤独な戦いを続けながらも成長し、巨大な敵の正体へと迫っていくというストーリーで、日本を含む全ての国と地域のNetflixで配信を開始しました。スティーヴンさんがテレビ局での製作で感じていた様々な課題から解放され、そのクリエイティビティの全てを投入して製作されたこの作品、世界中のNetflix視聴者からどのような反響が生まれるのか、注目したいところです。

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