「先祖代々の土地を次世代に残したい」という地権者の思いと「減り続ける横浜の緑を保全したい」という市民の思い。現地へ足を運ぶと、開発と保全の間で30年近く宙ぶらりんになりながらも、市民の憩いの場として愛されている里山の風景があった

 横浜市の南部に位置する栄区の上郷猿田地区。鎌倉市と境を接する同区に、JR港南台駅から約1キロの徒歩圏ながら「横浜市最大」ともいわれるまとまった緑が残っている。この土地の一角に2017 年後半、注目が集まった。市内でも貴重なホタルの生息地としても知られるこの地では、東急建設(東京都渋谷区)が約31.9ヘクタール(東京ドーム7個分)の緑地のうち、約3割にあたる12.5ヘクタールの開発を計画している。

 手続きが進められる中、緑地の「全面保全」を主張する市民の有志「上郷・瀬上の自然を守る会」、認定NPO法人 「ホタルのふるさと瀬上沢基金」が中心となり、横浜に日本支社を置くアウトドアブランドのパタゴニアらが協力して「横浜のみどりを未来につなぐ実行委員会」を組織し、2017年10月23日から12月10日にかけ、署名活動が実施された。この活動は、今回の都市計画案について「市民の賛否の意思を明らかとし、もって栄区上郷町周辺都市計画案に市民の意見を反映する」ための住民投票条例制定を求める目的で展開された。

 署名数は総数36,441人(有効35,978、不備463人)で、住民投票条例制定請求条件の62,000人には達しなかったものの、今回の運動は横浜市内外に都市の緑地のあり方・関わり方について問いかけ、市民が考えるきっかけとなった。

放置される西側、地域の歴史を物語る東側

東急建設による都市計画提案

 JR港南台駅から20分ほど歩くと、周辺をマンションと道路に囲まれた谷地が現れ、中央を分断するように都市計画道路「舞岡上郷線」が敷設されている。

 東急建設の計画によると、同社はこのうち舞岡上郷線の西側を「市街地整備エリア」、瀬上市民の森や上郷市民の森・氷取沢市民の森などと隣接する東側を「自然環境保全エリア」に分割。西側に医療機関を含めた商業施設や約300戸の住宅街、東側に合計約8ヘクタールの2つの公園と約11ヘクタールの特別緑地保全地区からなる緑地を整備し、市民と自然の触れ合いを目指した自然保護施設や、ウェルカムセンターの建設を予定している。

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