南極から帰って来たのでゼロからのスタートです──。先月、有給休暇を使って自転車で南極大陸を走る旅に出発し、今月10日に南極点到達を果たした神戸市須磨区の会社員、大島義史さん(31)が23日、THE PAGE大阪の取材に応じ、夢に向かって走った日々のことを振り返った。元々「僕は冒険家ではなくサラリーマンです」と語る大島さんだが「今回は家族や会社の支えもあり自転車で南極点の夢を果たせました。旅で借金した分は、これから一生懸命働いて返していきます。(22日から)出社して仕事があることが本当にうれしい」と笑顔で話している。

【写真特集】神戸の会社員が自転車で南極点到達

家族や会社の理解、前の上司も「決まって良かったな」

[写真]自転車での南極点到達を果たした大島義史さん=10日南極点で(本人提供)

 大島さんは、神戸市内の大手輸送機器メーカーで経理を担当。これまでも不動産部門や工場の管理部門、国際税務など、様々な分野を担当してきた。一方で、大学在学中から自転車旅に魅せられ、長期休暇などを使って北極海からアメリカ、オーストラリアの砂漠、シルクロードではタクラマカン砂漠などを走ってきた。

 会社員となり南極の夢はあきらめていたが、神戸市内の図書館で見た書籍に載っていた「民間人でも南極に行ける」という一文を見たこと。そして、自分の中では北極海からオーストラリア南端へ到達したことで、会社員という立場から「世界縦断を果たしたぞ」と思っていたが、妻から「世界縦断だったら南極点じゃないですか?」と言われたことを思い出し、南極へ行く可能性を探るべく、妻や会社に相談。妻も最初は「本当にいくんですか」と驚いていた様子だったが、会社とも約5年にわたる調整のうえ、ゴーサインが出た。

 「妻が本当に理解してくれて、家のこと、2歳の娘の子育てなどもあるのに送り出してくれました」と大島さん。また、会社でも5年前にいた部署の上司から「決まってよかったな」というメールをもらった時は、感動したという。

初めてのガイド付きで挑戦 万全な形で

[写真]風が強く自転車を押して進むことも(本人提供)

 そんな家族や仲間の支えを胸に、昨年12月24日に関西国際空港から南極観光ツアーの出発地としても知られるチリのプンタ・アレーナスへ向かい民間輸送機に乗り換え。南極西部にある「ユニオン・グレーシャー基地(UG)」という民間ベースキャンプへ。そこで数日間、自転車を組み立てるなどし、約200キロの走行練習を行った。

 本来であれば1人での挑戦を考えていたが、会社から「生命の危険」の心配の声があり、それを納得させるためのリスクヘッジを考え、イリジウム携帯電話による常時「ホットラインの確立」と「ガイド付きで旅をする」の2点を決めた。

 そこで、ガイドに来てくれたのは、アメリカの冒険家、エリック・ラーセンさん(44)。UGで初対面後は、その周辺で約200キロを走行したり寝食を共にするテントを設営など生活するためのトレーニングの日々を送り、今月4日から南極点に向け自転車で出発した。

 「1人旅しか経験がなく今回も1人でと思っていましたが、何かあった時に『やるだけのことをやらずに行きました。そのまま遭難しちゃいました』ということになると、僕が批判を受けるのはいいけど、会社が批判受けては迷惑をかける。そこで、南極大陸への最大の航空輸送サービス提供会社である、アドベンチャー ネットワーク インターナショナル(呼称 ANI)を通じて、エリックに来てもらいました」(大島さん)