製作当時の姿がほぼ残る木製椅子の出土、全国的に珍しい

 奈良県橿原市の新堂遺跡の発掘調査に伴う特別遺物見学会がこのほど、同市内のクリーンセンターかしはらで開かれ、古墳時代の優雅な椅子が公開された。製作当時の姿がほぼ残り、美しい木目も確認できる木製椅子の出土は、全国的にも珍しい。見学会は3月4日にも開催される。

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熟練の技が冴える優雅な木製椅子

[写真]公開された古墳時代の木製椅子。優雅な仕上がりで近くで見ると木目も美しい=奈良県橿原市のクリーンセンターかしはらで

 見学会は歴史に憩う橿原市博物館で開催されている新堂遺跡発掘調査速報展に関連して実施された。公開された木製の椅子は、5世紀ごろの古墳時代中期の河道跡から、大量の遺物とともに出土。今から1500年ほど前に作られた腰掛タイプの椅子だ。

 素材は硬い材質のコウヤマキ。生活用具として普段使いされる事例は少なく、古墳に埋葬する木棺などの特殊な用途で使われていたため、椅子も儀礼の場で使用された公共財ではないかと推定される。

 長さ35センチ、幅17・5センチで、高さは12センチ。腰を下ろす座面の中央が窪み、ゆるやかに反り上がった後、両端部では逆方向にカーブを描いて装飾を施す。一木造りで木目が美しい。脚部を含めた全体のバランスもいい。確かな美意識と熟練の技能が冴える古墳時代の職人芸だ。

椅子の主は巫女さんか神様か

[写真]初期須恵器や韓式系土器も多数出土

椅子であれば、座ったのは誰か。発掘調査を手掛けた橿原市教育委員会生涯学習部文化財課の石坂泰士さんは「人物像は特定できない」と前置きして、次のように話す。

  「椅子の大きさは、現代人が、お風呂で使う風呂椅子のサイズに近い。人間が座れないことはありませんが、余裕を持って座るには、やや小振りでしょうか。巫女さんが座ったかもしれませんし、人間ではなく神様の座る席として用意された可能性も考えられます。新堂遺跡の周囲に広がる古墳群などへも視野を広げ、地域でどんな人たちが暮らし、どのような社会が構成されていたのかを探る作業を通じて、椅子の役割なども明らかになってくるかもしれません」

 見事な椅子ながら、作り手も椅子の主も、容易には特定できない。少しずつなぞに迫るミステリアスなところが、古代史研究の妙とも言えるだろうか。椅子をのぞき込んで、「かわいい」とつぶやいたのは、考古学を学ぶ女子大生。「古代史は限られた史料を手掛かりに想像するところが楽しい。新しい出土品で、歴史が一新するだいご味もあります」と語り、椅子が使用された当時に思いを馳せていた。

[写真]発掘調査担当者による成果報告

 見学会は3月4日にも開催(午後1時半から2時半まで)。木製椅子の他、初期須恵器なども公開される。同博物館の速報展は1階ロビーで6月30日まで開催中。同博物館と見学会会場のクリーンセンターかしはらは隣接している。詳しくは同博物館の公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)

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