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 花の姿かたちがかわいい妖精(ようせい)や踊り子を感じさせるランの仲間が大阪市の咲くやこの花館で開花し、訪れる人たちの目を楽しませている。花は小さいものの、1株にたくさんの花が咲いている。

【拡大写真付き】大阪「咲くやこの花館」25周年 ── 進化する植物園

クリスマスをはさんで来年1月まで見ごろが続く

[写真]オンシディウム・ヘブンセント・レドレンスの拡大写真。コスチューム姿の女の子に見えませんか?

 この花は、オンシディウム・ヘブンセント・レドレンス。ランの仲間であるオンシディウムの品種のひとつだ。熱帯雨林植物室の入り口に展示され、愛らしい姿とバニラのような甘い香りで来館者を出迎えている。

 花はエンジ色と白のツートンカラー。帽子をかぶりスカートを履いた妖精のような女の子が、笑顔で手を広げている風情だ。花は小さいものの1株にたくさんの花が咲き、見方によってはたくさんのアイドルが華麗な踊りを披露しているようにも見える。

 オンシディウムはラテン語の学名。花の姿かたちがスカートを広げて踊る女性に似ていることから、英語名で「ダンシングレディ」と呼ばれるという。

 花を間近に鑑賞していた女性らは「言われてみたら、女の子に見える」「ほんまや、ここが頭で。かわいい」などと声をかけ合い、うれしそうにスマホで撮影していた。

 今月中旬から咲き始め、花芽を順次開花させながら咲き続けるため、クリスマスをはさんで来年1月まで見ごろが続く。

多彩な美しさは厳しい環境から生まれた

[写真]たくさんの花が咲いており、さながらお揃いのコスチュームで踊り回るアイドルグループのステージを見ているよう? 紹介するのはフラワーアテンダントの児玉萌さん=大阪市鶴見区の咲くやこの花館で

 かわいい踊り子たちに魅了されて、ランの仲間に少し興味を持ったら、同館をゆっくり巡回したい。ランの仲間は野生種だけで2万種に達し、同館では野生種を中心に園芸種を含めて600(品)種を保存育成。隣接するバックヤードで栽培し、開花期を迎えた株を、随時入れ替えながら館内で展示している。ランの見どころはどこか。久山敦館長は次のように話す。

 「ランの仲間は種類が多いうえ、変化の幅が大きい。花の姿かたちがバリエーションに富んでいるので、華やかなカトレアや気品のある寒蘭など、どなたにも好みの花が見つかるはずです」

 厳しい環境下の進化を経て、多様な姿かたちを獲得したそうだ。

 「ランの仲間は植物の進化史でもっとも遅く登場したため、豊かな土壌に恵まれた地上は他の植物たちに覆い尽くされ、生きるスペースは残っていなかった。そこで、樹木の幹などに着生し、ニッチと呼ばれるすき間を利用して生きる道を選んだ。ほこりのように小さくて軽い種を幹にまき散らし、可能性は低くても幹にいる菌と共生して発芽させる方法などを生み出した。それぞれの厳しい環境に適合するため、いろんな形に進化していく。ただし寄生種とは異なり、樹木の養分を奪って枯らしたりしない。すき間を少し借りて、いのちをつないでいくという姿勢ですね」(久山館長)

 何代にもおよぶ試行錯誤が仲間の種類を増やし、人間には多様な美しさや感動を提供してくれたわけだ。ランの仲間たちの生き方から学べることも多いのではないか。同館では来月、ランをテーマに「富貴蘭美術品大会」「秋の洋ラン展」「寒蘭展」を連続開催する。詳しくは咲くやこの花館の公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)