[写真]食用廃油を回収するためのトラック

 安全保障関連法制が成立しました。当初、同法では「存立危機事態」の一例としてとしてホルムズ海峡の封鎖が挙げられていました。ホルムズ海峡が封鎖されると、日本に来る石油を運ぶタンカーが通航できなくなるため、日本で燃料が不足し、私たちの生活に支障が出ることになります。資源の乏しい日本では、石油が供給されなくなることは大変な事態です。一方、石油がないなら自作すればいいのではないか? といった異なった発想からの取り組みも始まっています。

“都市鉱山”では日本は有数の資源国

 パソコンやスマートフォン、自動車に欠かせない精密部品の原料は、レアメタル・レアアースと呼ばれる希少性の高い金属や資源です。日本で使われるレアメタルやレアアースの多くは、海外からの輸入に頼っています。レアメタル・レアアースは中国からの輸入に頼っているため、日中関係が悪化したとき、日本の製造業は危機に面しました。

 そのときに注目されたのが“都市鉱山”です。都市鉱山とは、廃棄されているパソコンやスマートフォン、家電に使われているレアメタル・レアアースを鉱山に見立てた概念です。日本には、不要になったパソコンや家電品が多く、それらからレアメタルやレアアースを取り出して再資源化することが推奨されたのです。

 資源の少ない日本ではありますが、都市鉱山という観点からすると、日本は有数な資源大国ともいえます。

油の再資源化“都市油田”の発想

 石油でも同様の視点から、再資源化の動きが見られます。京都市では、「都市油田プロジェクト」と銘打って、不要になった油を再生させる取組が進められています。

 油の再資源化は官だけが取り組んでいるわけではありません。食用廃油の再資源化に取り組んでいる民間企業も多くあります。

 東京都・墨田区に本社を置く株式会社ユーズは、事業者や家庭から排出される天ぷら油などを回収する“TOKYO油田プロジェクト2017”を立ち上げて、油の再資源化に取り組んでいます。同プロジェクトの代表を務める染谷ゆみさんは、“都市油田”に着目したきっかけをこう話します。

「実家の家業が燃料店だったこともあって、昔から油は身近な存在でした。1993年に使い終わった天ぷら油で自動車を走らせようとしたんです。そうしたら、天ぷら油でも簡単に自動車を走らせることができました。そこから、食用廃油を再利用する取り組みを始めました」

 当時は環境への関心が薄かったこともあって、食用廃油を再資源化してガソリンの代替燃料にするという発想はあまり支持されませんでした。風向きが変わるのは1997年、京都議定書が発効されたことでCO2の削減が社会的関心事になったからです。

 当時、年間の食用廃油は業務用20万トン、家庭用20万トンと、膨大な量の油が廃棄されていました。

「私たちの工場では、独自に開発した技術で天ぷら油をリサイクルして軽油を生産していますが、この軽油を“VDF”(Vegetable-Diesel-Fuel)と呼んでいます。VDFは硫黄酸化物を発生させず、黒煙も従来の軽油の2分の1しか排出しませんので環境問題にも大いに役立ちます。その一方で、価格は従来の軽油と変わらず、自動車の改造も不要です」(染谷さん)

「TOKYO油田プロジェクト2017」は、2007年からは本格的に活動を広げ、いまや区役所や商店街などにも廃油の回収ステーションを設置しています。現在は東京を中心に神奈川・千葉・埼玉など500か所に回収ステーションが増えました。それらのステーションから回収される食用廃油は一日で約20トンにも上ります。

 それほど多くの食用廃油が回収されていますが、食用廃油は自動車の代替燃料にあまり使われていません。その理由は、食用廃油を再資源化して燃料にするには国の法律で規制されているからです。