4月1日から電力の小売りが全面的に自由化されます。これまで、原則的に個人宅は東京圏なら東京電力、関西圏なら関西電力といったように決められた事業者としか契約することができませんでした。その概念が4月から大きく変わります。

 自由化を目前に控え、新たに多くの事業者が電力の小売りに参入することを表明しています。消費者にとって、契約の選択肢が増えるのです。2011年の福島第一原発事故をきっかけに電力について考える機会は増え、電力自由化にも高い関心が寄せられています。

区内施設の電力を「新電力」に切り替え

[写真]世田谷区役所庁舎。同区は自然エネルギーの地産地消・自然エネルギーの利用拡大を基本目標に据えている

 実は4月から始まる電力の自由化は、あくまでも「一般消費者に向けて」です。大規模な事業者や工場、オフィスビル、デパートなどは、すでに自由化は始まっています。そうした電力を積極的に活用しているのが、東京・世田谷区です。

「世田谷区は、2010年に『新電力(PPS)』から電力を購入するようになりました。まず区内の小学校から導入し、2012年からは区内にある181の施設を新電力に切り替えています。新電力に切り替えたことで、これまで公共施設の年間電気代が11億円から10億円になり、1億円も削減することができました。2015年度はさらに削減効果が出て、年間の電気代は9億円。2億円の削減になる見通しです」(世田谷区環境計画課)

 「新電力」は、主に企業などが工場の余剰電力を活用したり自家発電したりして電力を売るもので、東京電力や関西電力のような「一般電気事業者」に対し、「特定規模電気事業者」に区分される新規参入の事業者です。規制緩和によって2000年3月から登場しています。

太陽光など自然エネルギーも活用

[写真]世田谷区の遊休地を活かした太陽光発電所。災害時には、非常用電源として使用する協定も結ばれている

 世田谷区のエネルギー政策は、新電力に切り替えて電気代を圧縮しただけではありません。自然エネルギーを活用する取り組みも率先して始めているのです。

「高度経済成長期の東京都内は環境汚染が激しく、それが原因でぜんそくなどに罹患してしまう子供たちが多くいました。大気汚染で学校に通えない子供たちのために、世田谷区は神奈川県三浦市に区立三浦健康学園という学校を開設しました。しかし、社会情勢が変化したことで、2005年に三浦健康学園は閉鎖されました。世田谷区は遊休地になっていた同地を太陽光発電所用地に活用したのです」(同)

 「みうら太陽光発電所」と名づけられた同施設は、世田谷区がリース会社に建設から管理までを委託しています。同区は太陽光発電所で生まれた電力を販売しているのです。

「太陽光発電所の経費から売電収入を差し引いても、年間で約800万円の収益があります。この収益で世田谷区は環境政策に取り組むことにしています。例えば、区民を対象にした太陽光発電所見学ツアーでは、広大な敷地に太陽光パネルが敷き詰められているのを目にすることができます。パネル面積は約8700平方メートル、畳に換算すると1900畳ぐらいの広さです。それほど広大な土地に太陽光パネルを敷き詰めても、一般家庭130世帯が使う年間電気量しか賄えません。見学ツアーは、いかに電力を生み出すことが大変であるのかを実感じてもらうことで、自然エネルギーへの理解と省エネ意識の啓発につながっていると思います」(同)