平たくのばされたピザ生地に、店員がチーズやバジルを手早くトッピングして窯の中に投入する。約1分後、窯の中からほどよく焼きあがった「マルゲリータ」が取り出された。生地の香ばしいにおいが立ちのぼってくる。実はこれ、職人不要のピザ製造システムによって焼き上がったピザだ。機械化が進むことで、日本の仕事の半分がなくなるとも言われる。この店にピザ職人の姿はない。

職人不要のピザ製造システムによって焼き上がったピザ

 ピザ店「ナポリ」や「ナポリス」を展開する遠藤商事・Holdings.(東京都渋谷区)。2月末現在、海外店舗も含む全56店にこのシステム導入しており、いわゆる“ピザ職人”は存在しない。同社の續(つづく)大輔取締役は「ピザ職人の存在をけっして否定はしないが、私どもの店には不要です」と話す。

 システムを使うことで、窯の温度管理やピザ生地のノシといった職人技は不要になり、研修を受けた店員なら誰でも本格的なナポリピザが焼けるのだという。研修に必要な期間はわずか3日だ。職人がピザを焼くと1枚1500円前後が相場だが、同店のシステムで焼き上がったマルゲリータは1枚350円。しかも、職人が焼く場合と同じ素材を使っている。

續取締役(左)と久慈本部長(右)

 このピザ製造システムは「EP-SYSTEM」と呼ばれ、独自開発の窯「ENDOME」と、ピザ生地のノシ作業を行う機器「P-SLIDE」、同社オリジナルのピザ生地から構成される。「食文化として根付くには、速い・安いだけでは必ず頭打ちになるので、旨いという部分も妥協せず、試行錯誤した結果、高い顧客満足度を産み出せるシステムを作り上げられたと思います」と同社。

 ピザを作る工程は、(1)P-SLIDEによるピザ生地のノシ作業(2)トッピング(3) ENDOMEへの投入(4)焼き上がり、という流れになっており、續取締役は「ノシ作業からトッピングまでが30秒、窯の中で焼きあがるまでが60秒、計90秒で出来上がります」と胸を張る。職人が焼いたら5〜10分かかるところ、大幅な効率化に成功した。

 ピザ焼きに際して窯内部の温度管理は、手に伝わる熱さの度合いで判断するなど、職人の経験と技に頼る面があったが、試行錯誤の末に温度ムラの緩和に成功。ピザ職人が伸ばした生地の再現に苦心した。2つのローラーでどの程度の力ではさみ込むかが問題で、自社オリジナルの生地に対して最適な力加減をひたすら追求した。