2008(平成20)年度から始まったふるさと納税制度は、その後に手続きが簡略化されたこと、テレビや雑誌などで豪華な返礼品などが取り上げられたことなどを理由に、一般にも認知されるようになりました。2013年度に受入件数が約42万7000件、受入額は約145億6000万円だったふるさと納税は、昨年度に受入件数が約1271万件、受入金額は約2844億円にまで達しています。

 ふるさと納税が急増した背景には、自治体が海産物や和牛といった豪華な返礼品をつけていることも一因になっています。今般、各自治体は多額のふるさと納税を広く集めるべく、豪華な返礼品を用意するようになりました。その結果、趣旨を逸脱するような返礼品合戦が起きています。

 激化する返礼品合戦により、東京をはじめとする都市部の自治体では税の流出が起きました。それらを受け、「ふるさと納税は都市部から税を収奪する制度だ」と、制度の歪みを指摘する声も強くなっています。そうした指摘を受け、総務省は各自治体に豪華な返礼品を自粛するよう通知しました。そうした中、税が流出する側と見られていた東京23区の自治体からもふるさと納税を活用する新しい動きが出てきています。

もともとドイツ姉妹都市の難民支援にふるさと納税活用

文京区がふるさと納税活用で始めた「子ども宅食」プロジェクトの公式HP

 ふるさと納税制度が始まって以降、東京23区の自治体は一方的に税が流出していました。それでも、ふるさと納税の趣旨や寄付文化を根づかせるといった立場から都心部の自治体は静観の構えを見せていました。

 ところが、近年は豪華な返礼品による税の流出が顕著になり、無視できない状況になっています。そうした事態に直面し、豪華な返礼品を用意しない文京区のふるさと納税に注目が集まっています。

 東京都文京区は、今年7月に子供のいる生活困窮家庭世帯に食料などを配送する支援事業“子ども宅食プロジェクト”の開始を宣言。ふるさと納税で、財源を集めると表明したのです。

「子ども宅食プロジェクトを始める以前にも、文京区はふるさと納税を活用して姉妹都市提携しているドイツ・カイザースラウテルン市が取り組んでいる難民の支援資金に充てていました」と話すのは、文京区子ども家庭部子育て支援課の担当者です。

 姉妹都市のドイツ・カイザースラウテルン市は多くの難民を受け入れていました。文京区はそれを支援するためにふるさと納税を活用し、その難民支援にも多額のふるさと納税が集まっていました。

 そして、文京区はふるさと納税のさらなる有効活用を検討。新たに子ども宅食プロジェクトをスタートさせたのです。

「文京区と聞くと富裕層が多いイメージを抱かれます。その一方で、支援を必要とする家庭も決して少なくありません。文京区では約700世帯が児童扶養手当を、約1000人が就学援助を受けています。生活困窮家庭は、『貧困であることを人に知られたくない』という思いから、できるだけ隠そうとします。そのため、支援の声が届きにくいのです。そうした見えない貧困を少しでも解消しようと始めたのが、同プロジェクトです」(同)。

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