今般、個人に対する徴税は強化される一方で、法人に対しては減税が議論されています。また、パナマ文書やパラダイス文書で明らかにされたように、企業や富裕層はタックスヘイブンによる租税回避といった手段を用いて税負担の軽減を図るケースもあります。

 海外のタックスヘイブンを利用することは大掛かりになるため、一部の大企業や超富裕層のみが使える手段でした。近年は、そうした海外のタックスヘイブンを利用しなくても、簡単に税負担を軽減できる仕組みがあります。それが“減資”という方法です。

税負担軽減図るため、大企業が減資で中小企業になる動き

[イメージ]新宿ビル群。企業が多く集まる東京都で法人事業税は重要な収入となっています(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

 減資とは、企業が積み上げた資本金を減らす行為です。資本金を減らすことは経営状態が悪化していると思われてしまうため、企業が率先して減資をすることは通常では考えられないことでした。

 減資が大きくクローズアップされたのは、2015年です。

 多額の損失を出したことを理由に、シャープは約1200億円の資本金を減資し、1億円にすることを計画しました。シャープの1億円減資計画は、事前に政界や経済界から非難を浴びたことで頓挫。結局、シャープは資本金を5億円まで減資することで落着しています。

 税務上、資本金が1億円以下の企業は中小企業に分類されます。中小企業になると、法人税・法人事業税などが軽減されるのです。

 資本金の数字だけで見るならば、シャープは大企業という位置に踏みとどまっていますが、シャープ同様に減資で中小企業になった有名な企業もあります。吉本興業は2015年に減資を実施しました。約125億円の資本金は、減資によって1億円にまで引き下げられています。

 シャープや、吉本興業のように経営状態が悪化したことを理由に減資をする企業とは異なり、税制の間隙を縫って自社の税負担軽減を図る企業が出てきたのです。

なぜ「外形標準課税」の制度ができたか

 税負担の軽減を狙った減資は、法人税を納める国の財政にも影響を与えますが、それ以上に大きな影響を受けるのが都道府県です。都道府県は、都道府県税である法人事業税の課税庁です。特に法人事業税を多額に得ている東京都は、意図的な減資で想定外の減収になってしまう恐れがあります。税収が激減すれば、都民に対する行政サービスが低下します。行政サービスを維持するためにも、課税庁は税負担軽減を意図した減資を見逃すわけにはいきません。

 「企業が経営難から減資をしたのか、それとも、税負担の軽減を狙って減資したのか、外見からでは判断がつきません。減資をしたからと言っても、一様に扱えないのが実態です」。困惑気味に話すのは都主税局税制部税制課の担当者です。

 実は、都は2000年に石原慎太郎都知事(当時)が、赤字の銀行にも収益ではなく資金量で課税できる仕組み、いわゆる“石原銀行税”を導入しました。当時の銀行は業務で利益を得ながらも、過去の事業運営で発生した不良債権処理によってほとんど課税されることがありませんでした。そのため、都の法人事業税は大きく減収しました。石原都知事が“石原銀行税”を制定した背景には、そんな財政事情がありました。“石原銀行税”については裁判で銀行と係争もしています。

 そうした都の動きを受け、政府は2003年に税制を改正。“石原銀行税”は発展的に「外形標準課税」となりました。この外形標準課税によって、収益をベースとした法人事業税の課税が見直され、所得基準のほかに、地方サービスを受けている応分の負担として、資本金や従業員数を基にした課税が可能になりました。しかしこれは、資本金1億円超の法人が課税対象で、それ以下の中小企業は免税されているのです。