待機児童は、小さな子供を抱える家庭だけの問題ではなくなっています。いまや社会全体で考えなければならない課題です。近年、国や地方自治体では待機児童解消のための取り組みが強化されてきました。そして、「待機児童ゼロ達成」を公表している市町村も出てきています。しかし、その内実を見ると、「待機児童ゼロ」を謳う自治体でも、まったく待機児童がいなくなったわけではありません。

実態を反映、新年度から集計切り替え

[イメージ]おもちゃで遊ぶ小さな子供(写真:アフロ)

 これまでの待機児童の定義は、自治体ごとに統一されていませんでした。そのため、市町村が発表する待機児童数は、独自の基準に基づいて算出されていたのです。なかには、“親が育児休業中”、“自治体の保育サービスを受けている”、“求職活動を休止している”といった理由から、保育園に入園できなくても待機児童として正式にカウントしていなかった市町村もありました。“待機児童ゼロ”は、現実を反映できていなかったのです。

 定義があいまいなままでは、待機児童の実態が把握できません。実態が把握できなければ、行政が対策を講じることもできません。そうした事情から、厚生労働省は「親が育休中でも復職の意志がある場合は待機児童に含める」といった新定義を制定。一部の自治体は、先行して新定義を用いて待機児童の集計を開始。2018年度から、全面的に待機児童数は新定義による集計に切り替わります。

 新定義による待機児童の実態が判明するのは、夏ぐらいになるでしょう。新定義に切り替わることで、すでに全国の待機児童数は一気に増加することが想定されています。

 待機児童問題を改善するべく、自治体は早くも対策に追われています。

東京都では新定義で8500人以上増える可能性も

 深刻な待機児童問題を抱える東京都も、新定義に切り替わることで待機児童の増加が見込まれます。正確な数字は公表されていませんが、8500人以上も増加するともいわれていますと言われています。これまでにも、都はさまざまな施策で待機児童問題に取り組んできました。認可保育所の新設のほか、都独自の基準で設置された認証保育所、小規模保育事業所などを増設するといったハード面の整備でも東京都は積極的に取り組んできました。

 そうした取り組みによって、都は待機児童問題で一定の成果をあげています。それにも関わらず、いっこうに待機児童は解消されていません。

「都は、いまだに転入超過で人口が増え続けています。特に目立つのが、30代~40代の共働き世帯です。世代的にも30代~40代は、0~2歳ぐらいの子供がいるケースが多く、そうした世帯がたくさん転入しているのです。そのため、待機児童問題が慢性化しています」と話すのは都福祉保健局少子社会対策部保育支援課の担当者です。

 2015年、都は保育サービスの利用児童数を2020年4月までに7万人分も増やす目標を設定しました。計画目標の達成に向けて、翌年には早くも保育サービスの利用者を約1万6000人分も増やしています。

 それでも、都の待機児童は解消するどころか、ますます深刻化しています。そのため、当初の目標を見直されることになったのです。保育サービス利用児童数を2020年までに、都は整備済の1万6000人分と追加分6万人分、合わせて7万6000人分を増やす方針に上方修正。都は民有地を活用した保育所等の整備を促進するため、賃料補助をはじめ固定資産税・都市計画税の減免といった支援策を打ち出しています。